妄想金魚


●大洪水が起きた日

初めは小さな穴だった。

その穴は夜のうちにひび割れを大きくし、水槽の水は2/3に減ってしまっていた。


「うわっ!!リビングが大洪水じゃあ〜!!」


朝6時半からハイテンションで叫ぶ彼女。しばらく呆然と起ち尽くしていたが、濡れた床にありったけのタオルを敷き、キッチンからアルミテープを持ちだすとひび割れ部分に補修をした。

僕達はとりあえずタライに移動させられたんだ。(まただよ)

水槽の水を抜いたり、床の掃除が終えた頃は9時が回っていた。大奮闘だ。彼女は掃除の途中、何度も僕達の方を見ると「誰が犯人だ?え?言ってみろ!」と呟いていた。

僕達がそんな技を持っているわけない。せいぜい水かフンを吹っかけるくらいだ。

彼女は水槽を買ったホームセンターに連絡をすると、割れた水槽を持ちどこかへ出かけていった。

2時間が経過した頃、再び水槽を抱え戻ってきた。

新品だ・・・。

水槽を購入して1週間ほどなので、新品と取り替えてもらったみたいだ。どうせならもっと大きな水槽を買ってくればいいのにと思ったけど、文句を言えばタライのままにされそうなので黙っておいた。いや・・洗面器かもしれない。


新しい水槽のセッティグを終えると、僕達は無事に元の水槽に戻る事ができた。


が・・・あれ?あれれれれ?



僕達より3〜5倍も大きい金魚が3匹泳いでる。



彼女は水槽を眺めながらこう言った。



「ホームセンターのお兄さんが、お詫びに金魚を3匹くれたんだよ。だから仲良くしてね☆」



うわー!!!これ以上増やしてどうする!!

仲良くする前に僕達は彼等に食べられそうだ。しかしデカイ・・。


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